2025年6月29日 聖霊降臨節第4主日礼拝説教要旨
「神さまの輝きを放つわたし」 小笠原純牧師
マタイによる福音書 5:13-16節
柚木麻子の『らんたん』という小説は、恵泉女学園中学校・高等学校の設立者の河井道と一色ゆりのシスターフッドの物語です。津田梅子や新渡戸稲造、有島武郎、平塚らいてう、山川菊栄などなど、いろいろな人たちが登場する楽しい小説です。明治時代の女性たちが生き生きと描かれています。それぞれの生き方の違いもあるわけですが、それでもお互いのことを考えあい、協力しあい、「ああ、シスターフッドっていいよね」と思えます。
小説の中で、新渡戸稲造が留学をする河井道を励ます話が出てきます。「提灯のように個人が光を独占するのではなく、大きな街灯をともして社会全体を照らすこと。僕は道さんにそんな指導者になってもらいたいと思って、どうしても欧米の夜景を見て欲しかったのです」。
河井道は新渡戸稲造の願いのとおりに、光を独占するのではなく、社会全体を照らす生き方をしていきます。そしてそのことのために、河井道は恵泉女学園を創立するわけです。まあ本当にりっぱな人だと思います。「そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい。人々が、あなたがたの立派な行いを見て、あなたがたの天の父をあがめるようになるためである」。このマタイによる福音書5章16節の言葉のように生きた人だと思います。
初期のキリスト教が広まっていった大きな理由は、クリスチャンが小さなよき業に励んだからだと言われています。ローマ皇帝のユリアノスは、キリスト教のことが大嫌いでした。それでクリスチャンが増えないようにするために、クリスチャンがしている小さなよき業をあなたたちもしなさいという手紙を書いています。
やっぱり地の塩、世の光として生きていくということは大切なことであるわけです。クリスチャンとしての志を失ってしまっては、なんのためのクリスチャンだということもあります。そのように生きているかとか、そのように生きることができるのかということだけでなく、そのように生きていきたいという志を、私たちは失わないようにしたいと思います。
イエスさまは言われました。「あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい」。イエスさまから託されている歩みを、しっかりと受けとめて、自分にできる小さな良き業に励んでいきたいと思います。