2023年11月3日金曜日

2023年10月29日

 2023 年 10 月 29 日 降誕前第9主日礼拝説教要旨

「創造の時の円舞(ロンド)」 山本有紀牧師

  創世記 1:1-5,24-31 節

 礼拝の暦はこの主日から新しい季節に入る。全部で 9 週ある「降誕前」節の後半4 週は「待降節」。救い主が幼子の姿で地上に降る、クリスマスまでを指折り数える。そして前半の 5 週は、救い主の到来という「約束」の成就に至る、神様と人間との間に紡がれた「契約の物語」を、世のはじめから順に辿る。今年の場合は、「天地創造の祝福」>「アダムとエヴァへの約束」>「アブラハムとサラへの約束」>「モーセと出エジプトのイスラエルへの約束」、そして、最後の 5 週目は(毎年必ず)、救いの約束の最終目的である「神の国の到来」を覚えて「再臨の、栄光に輝くキリスト」に関わる箇所を読む(再臨の希望の内に、「最初の到来」を待つ季節へ)。農耕のサイクルでは、収穫の祭りの季節に、私たちは礼拝生活のサイクルにおいても、神が耕し、蒔き、守り育ててその収穫を心待ちにされる、この「被造世界」とこれを保全する務めを委ねられた私たちの人生と、社会全体の歴史がもたらす「実り」の在り様について、信仰の先達が辿った道を記念しつつ、深く吟味するように導かれている。

 イスラエルの民がこの「天地創造物語」を生み出したのは、民族にとって最も暗い時代=バビロニア捕囚の時代だった。国も王家も滅び、礼拝を捧げる神殿もなく、モーセが授かったという十戒の石の板も奪われた。彼らが「神の民」であることの印が消失した時代、かつて祭司であった人たちが、この創造物語を生み出した。そこには、イスラエルの神がこの世を「良いもの」として祝福し、美しく整え、その秩序の保全者として自分たちを選んだという信仰が示される。だから捕囚の民はこの物語に生かされて、天地創造の秩序、即ち安息日を命にかえて守り、被造世界のサイクル、蒔き、育て刈り入れる祝福のサイクル、この世の被造物すべてが参与する円舞(ロンド)を、自らの「神の民」としての再生の希望を胸に、躍り続けたのだった。

 今も、この円舞は続く。私たちの人生も、社会の歴史も、自然のリズムもすべてがこの円舞の内にある、と天地創造神話は物語る。成功だけでなく、失敗も裏切りも罪も背徳もこのサイクル内で繰り返される。飢饉も不作も洪水も疫病も地震も、あらゆる自然災害も、そして差別や不正義、戦争も。秋を収穫の感謝として迎えることのできない場所も人も毎年存在する。それでも私たちには、この被造世界を「良い」ものとして保全する務めが課せられている。世のはじめの救い=祝福の約束を、この年も私たちはそのままに守り、いのちのサイクルの円舞を続けていかねばならない。その務めを共に担う仲間でありたい。

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