2023年1月21日土曜日

2023年1月15日

 2023年1月15日 降誕節第4主日礼拝説教要旨

 「舟を岸へ引き上げて」 山本有紀牧師

  ルカによる福音書 4:16ー30節

 私たちは、人生の中で何度も、息をすることさえ忘れるような驚きを体験することがあります。満天の星空、日の出の光景、壮大な地形、或いは奇跡的としか言いようのない「救い」の体験は、私たちを鷲掴みにし、畏怖と驚愕を与えます。その聖なる「驚き」は私たちを打ち砕き、へり下らせ跪かせるでしょう。そうして私たちは、今までとは違う世界観、人生観を得、新しい価値観へと「方向転換=悔い改め」して行くのです。飼い葉桶の幼児を見つけた羊飼いたちも、輝く星に導かれた賢者たちも、イエスの洗礼を目撃した人たちも、そして、ナザレのイエスが福音を語り人々を癒すのを見た人たちも、深い、聖なる驚きにとらえられ、打ち砕かれ謙って跪き、やがて、今までとは違う、新しい人生を歩み始めたのでした。最初の弟子となった4人の漁師たちもまた、この聖なる驚きを体験し、畏れを伴う激しい驚きに鷲掴みにされ揺さぶられて、新しい人生を、イエスと、そして同じ体験を分かち合う仲間と共に歩み始めるのです。

 その朝、イエスはガリラヤ湖の岸辺を歩いていました。そこへ多くの人がイエスを求めて押し寄せてきます。そこでイエスは、夜通しの漁の後、疲労困憊するペトロの舟に乗り込み、水上から人々に語りました。ペトロにしてみればいい迷惑だったでしょうが、人々は話に聴き入り、小一時間ほど後、イエスが語り終えるころにはすっかり満たされた様子となります。その頃合いに、イエスがペトロに一対一で語りかけます。「湖の深いところへ漕ぎ出して網を下ろしてご覧」。

 イエスの促しに抵抗を示しながらも「しかし、お言葉ですから」と、不信や諦めと、一方で、「ひょっとしたら、昨晩とは別の結果が出るかもしれない」という根拠のない期待が入り混じる曖昧な気分のまま、ペトロはイエスの「馬鹿げた提案」に付き合うくらいのつもりで網を降ろしたに違いないでしょう。すると、そこには今まで経験したどんな大漁とも違う、驚くべき体験が待っていました。

 ルカ福音書のギリシャ語の通りに読めば、まさに「驚きが、ペトロを掴んだ」のです。ペトロ自身の能力にも知識にも、もちろん信仰の有無にも全く左右されない、「聖なる驚き」がペトロを鷲掴みにし、彼を圧倒し打ち砕き、へりくだらせ、方向転換=悔い改めを迫りました。

 驚きと畏れに打たれて立ちすくむペトロに、イエスは「恐れることはない」と声をかけます。聖なるものとの出会いを恐れるべきではない、その体験によってもたらされる新しい価値観を受け容れること、そしてそこから始まる新しい人生へと歩み出すことを恐れてはならない、あなたはその恵に相応しい、とイエスは語りかけたのでした。その言葉に押し出されて、ペトロたちは、「舟を岸へと引き上げ」新しい人生、新しいし時間へと歩み出すのです。

 聖なる驚きに鷲掴みにされた仲間と共に、イエスと共なる旅を始める、その道を選び続ける者でありたいと願うものです。「恐れることはない」のですから。


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